
水産事業
魚も、人も、未来も育てる。
巴商会の陸上養殖プロジェクト。
プロジェクト概要
水産資源の減少、海洋環境の悪化、そして食料自給率の低下。こうした社会課題に対し、巴商会が挑むのが陸上養殖という新たなフィールドだ。水産事業推進課では魚の成育に欠かせない酸素ガス供給を起点に、養殖設備の販売から生産支援、さらには自社での養殖・販売までを手がけるプロジェクトが始動した。ガス商社としての専門性と、顧客と長く寄り添う姿勢を強みに、「いつでも美味しい魚が食べられる未来」を目指すプロジェクトに挑んでいく。

「ガス屋」から「魚屋」が誕生
水産事業推進課では、酸素ガスや養殖設備の販売、新規参入者への生産サポート、そして自社での養殖・販売という3つの柱で事業を展開している。
「なぜガス商社が水産業を?」そう疑問に思う人も多いだろう。実は、巴商会と水産業の関わりは、養殖場への酸素ガス供給から始まった。魚を育てるための水槽用酸素ガスを届けるうちに、次第に養殖の現場そのものに深く関わるようになっていった。
「お客様にガスをたくさん使っていただくこと以上に、お客様の事業が続いていくことを大切に考えています」
彼は語る。この姿勢は、社是「お客様のためになることをする」という考えに根ざしている。巴商会は創業依頼、取引先の事業が成功することを第一に考えて向き合ってきた。
「養殖業のお客様と関わる中で、本当に求めているのは“ガス”ではなく、“良い魚を育てる環境”であるのだと気づきました。だからこそ、魚を育てるために必要なすべてをサポートしたいと考えるようになったんです」
ガスから始まった関係は、いつしか設備や環境づくりへと広がっていった。
お客様の販路拡大のために、
自ら養殖に参入
水産事業の歩みは、決して順風満帆ではなかった。養殖に必要な設備には高額な費用がかかり、導入できる顧客は限られているのが現状である。さらに近年では、異業種から養殖業に参入する企業も増え、魚の販路に悩む声も少なくない。こうした課題に対し、巴商会は自社での養殖に乗り出すことを決意した。
「実際に生産を自分たちで行えば、ノウハウが蓄積できますし、新たな販路を開拓すれば、お客様に紹介することもできます」
巴商会にとって最も大切なのは、顧客の養殖事業が持続可能な形で続いていくことである。そのために、自社で実践しながら得た知見を還元し、販路支援まで一体となって取り組む姿勢を貫いている。
巴商会から、ブランド魚を生む
水産事業推進課では、魚を養殖するだけでなく、自社で育てた魚をブランド化し、一般消費者に届けることも視野に入れている。養殖魚の認知度を高め、「養殖という選択肢」をより多くの人に届けるために、現在も段階的に取り組みを進めている最中である。
「日本では、どうしても天然の魚のほうが好まれる傾向があります。でも、ヨーロッパでは『何を食べて育ったか分からない天然魚』より、『人間が管理した餌で育った養殖魚』のほうが安全だという考えもあるようです。日本は海に恵まれていて、昔から天然の魚が豊富に獲れていた背景もあり、『天然のほうが良い』という意識が根強いのではないでしょうか」
Sは、地域による価値観の違いに触れながらも、日本国内でも養殖魚の価値を正しく伝え、そのイメージを少しずつ変えていく必要があると考えている。水産事業が利益に直結するまでには多くの課題が残されているが、課には異なる業界から集まった多様なバックグラウンドを持つメンバーが揃っており、それぞれの視点を活かしながら、「いつでも美味しい魚が食べられる未来を目指して」という共通のビジョンに向かって歩みを進めている。
「メンバーと話すときは、できるだけ明るい未来の話をするようにしています。やってみたいことや実現したいことを共有することで、課題にも前向きに向き合うことができます」
挑戦を歓迎する風土のなかで、巴商会は志ある仲間とともに、美味しい魚が食べられる未来を目指している。国際的に食料問題が叫ばれる昨今、天然と養殖という枠を超えて、魚を当たり前に楽しめる未来をつくっていくことを目指している。


S.ATSUSHI
1995年入社、横浜研究所(現湘南研究所)で品質管理分析を担当する。2010年より開発部エコプロダクツGrにて環境関連機器の販売に従事し、2015年よりイノベーション推進課 課長として水産・環境関連機器の販売や新事業の企画を担う。2025年に水産事業推進課 課長就任。水産事業の事業化に取り組んでいる。

